大阪地方裁判所 昭和37年(ワ)3966号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕一、責任原因
本件事故は左の各事実より被告山内の過失に基くものと認められ、同被告は民法第七〇九条により、被告会社は自動車損害賠償保障法第三条により、原告らに対し損害の責を負わねばならない。
(イ) 本件南北道路は、市電軌道併用の大阪市道、梅田都島守口線であつて、両側の各三・五メートルの歩道を除いた路巾は一六・九メートルで、軌道敷石畳より、左側歩道にいたる北行車道巾は五・四メートルであり、直接コンクリート舗装路で、当時路面は晴天で乾燥しており、路は直線で極めて見透しはよかつた。
(ロ) 常時は勿論事故時も車両の交通量は極めて頻繁であつた。
(ハ) 被告山内は軽四輪車を追いこすため市電軌道上を北進していたところ、現場約二九メートル手前で、交通取締警察官にとがめられ、軌道敷通行違反を問われて取調を受けるため、左側歩道敷右へりより約五、六〇センチの間隔をあけて停車した。(被告車は五八年式ダツトサンで車の間は一・四六六メートルである)
(ニ) 警察官が右停車位置に近ずいてきたので、被告山内は取調に応じようとしたが、被告車は右側ハンドルで、左側助手席に一尺五寸角位のボール函を数個載せていたため、左側に出るのは手間どるところから、一瞬右側サイドミラーを覗いても右側に車両通行をみなかつたので、それ以上ルームミラーをのぞくとか、自身振返つて後方を確認するとかの措置をとらず、右扉を少くとも約五センチあけた瞬間、後方から進行してきた亡太市の車の左ハンドルが「カチツ」とひびきを為して扉に当つた。
(ホ) 亡太市はその後方約六・二メートルの地点(左側歩道敷石へりより約一・八メートル)より右にハンドルを切つて時速二五乃至三〇キロ近くで被告車の右約二〇センチのところに沿つてタイヤ痕をのこしながら北進してきたところであつた。
(ヘ) 亡太市は右衝撃により、右斜前方約三・九メートルの地点に車もろとも転倒し、折から殆んど亡太市と並行もしくはやや先んじて、亡太市よりはやや低速で走行していた訴外田村運転の三輪貨物自動車、大う三七九三号の左後車両直前にころがりこんだため、轢過され、受傷死亡した。
(資料、<省略>)
右各事実よりして、被告山内は車道に停車する際、なるべく左側端に近よせて停車すべきなのにそれも十分でなく、しかも運行中、助手席にかなりの荷物を載せて、事故防止措置にかかわる運転者の機能の自由を自ら束縛し、かかる交通頻繁な事故発生の危険が十分予想できる車道方向に向つて右側方及び後方車の有無、進行の状態など確めることなく漫然右扉をひらいた過失が明かである。
なお自動車損害賠償保障法にいうところの自動車の運行とは輸送、交通機関としての自動車が点の存在でなく物体であることからして、位置の移動である走行そのものに限らず、走行の前提となる道路上の空間の一部の占有ならびにその占有に伴う扉の開閉等の附随的な装置の使用をふくむのは当然であつて、停車中の扉の開閉によつて生じた本件事故もまた加害車の運行によるものであること言をまたないところである。
<反証排斥、省略>
また、両車両の構造位置などから亡太市の車のハンドルが加害者の右扉に接触するはずがないとの被告らの主張も加害車の停車地点がやや歩道に向つて左に傾斜気味であること、亡太市の車の走行時のタイヤのバウンド、車体の振動などを考えると、たやすく採用できないしかえつて十分衝突の可能性は認められる。(現場検証の結果)。(亀井左取 舟本信光 今枝孟)